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——これからのお茶室はどうなっていくと思いますか

「場」の演出で茶室ができる

小沢教授 お茶を飲むというのは極めて日常的な行為なので、茶の湯が芸能として成立するには非日常性が必要となります。
非日常の空間やシチュエーションを用意することで、改めてお互いに向き合うことができ、お茶を通してお互いが尊敬することができる、それが茶の湯として成立するということなんですよね。

非日常のための演出のひとつが茶室であり、いろいろな作法だといえると思うんです。
逆にいえば、非日常性が感じられるシチュエーションになればいい。お点前を習って、お客様のためにその動作をすることで非日常を作り出すことができたり、家庭のリビングだって、例えばお茶用の屏風で囲ったらそれでいいかもしれない。照明を変えるだけでも、 掛物やお道具を使うだけでできるかもしれない。

現代は、新しい専用の空間を作ることは難しくても、専用の「場」、いつもと違うという緊張感をお互いに感じることができる「場」を作ることを目指せばいいのではないでしょうか。

——小沢先生にとって茶室とは何ですか?

茶室とは、人と人との関係を形にした空間

小沢教授 一人では成立しない芸能という点が、茶の湯の最大の特徴です。最低、亭主と客、二人がいないと成立しない。茶室というのはその人と人の関係を示す空間だと思います。

以前に、大学の授業で「現代の茶室」という設計の課題を出した時も、お茶のための空間というより、「茶室というのは人と人が向かい合う空間で、その関係を形にしていくものである」という前提から、作品を作ってもらいました。
お互いが改めて相手のことを見つめるためのしかけをしたり、天井を低くしたり壁の圧迫感を出して非日常の体験をさせようと考える人もいたり。学生ごとにこれだけ違うものが出てくるんだなというのが面白かった。
たくさんの人が茶室を考えることは、たくさんの人が茶の湯を考えるということになるだろうし、もっと突き詰めれば、人と人の関係を改めて考えるきっかけになると思います。

——本日は貴重なお話をありがとうございました

小沢朝江(おざわ・あさえ) 教授
工学博士。東海大学工学部建築学科教授。1986年、東京理科大学工学部建築学科卒業。1988年、神奈川大学大学院修士課程修了。2002年より東海大学工学部建築学科助教授、2007年より現職。1999年、日本建築学会奨励賞受賞。著書に『名城シリーズ11 二条城』(共著、学習研究社、1996)、『日本住居史』(共著、吉川弘文館、2006)、『明治の皇 室建築―国家が求めた“和風”像』(歴史文化ライブラリー、吉川弘文館、2008)など。